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菅原孝標女
3 quotes
“東路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始めけることにか、世の中に物語といふもののあなるを、いかで見ばやと思ひつつ、つれづれなる昼間、宵居などに、姉・継母などやうの人々の、その物語、かの物語、光源氏のあるやうなど、ところどころ語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、わが思ふままに、そらにいかでかおぼえ語らむ。”
菅原孝標女 (1008–1060) said by 1060 at the latest wikiquote:ja, CC BY-SA 4.0 source
“源氏を一の卷よりして、人も交らず、几帳のうちにうち臥して、ひき出でつつ見る心地、后の位も何にかはせむ。夢にいときよげ僧の、黄なる地の袈裟着たるが来て、「法華経五巻をとくならへ」といふと見れど、人にもかたらず、いふとならはむとも思かけず、物語の事をのみ心にしめて、われはこのごろわろきぞかし、さかりにならば、かたちもかぎりなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。光の源氏の夕顔、宇治の大将の女君のやうにこそあらめと思ひける心、まづいとはかなくあさまし。”
菅原孝標女 (1008–1060) said by 1060 at the latest wikiquote:ja, CC BY-SA 4.0 source
“親 なりなば、いみじうやむごとなくわが身もなりなむなど、ただゆくゑなき事をうち思すぐすに、親からうじて、はるかに遠きあづまになりて、「年ごろは、いつしか思ふやうに近き所になりたらば、まづむねあく許しかしづきたてて、ゐてくだりて、海山のけしきも見せ、それをばさる物にて、わが身よりもたかうもてなしかしづきて見むとこそ思ひつれ、我も人も宿世のつたなかりければ、ありありてかく遥かなる国になりにたり。おさなかりし時、あづまのくににゐてくだりてだに、心地もいささかあしければ、これをや、この国に見すてて、まどはむとすらむと思ふ。人の国のおそろしきにつけても、わが身ひとつならば、やすらかならましを、ところせう引き具して、いはまほしきこともえいはず、せまほしきこともえせずなどあるが、わびしうもあるかなと心をくだきしに、今はまいておとなになりにたるを、ゐてくだりて、わがいのちもしらず、亰のうちにてさすらへむはれいのこと、あづまのくに、ゐなかびとになりてまどはむ、いみじかるべし。亰とても、頼ももしう迎へとりてむと思ふるい、もなし。さりとて、わづかになりたる国を辞し申すべきにもあらねば、亰に留めて、長き別れにてやみぬべき也。京にも、さるべきさまにもてなして留めむとは思ひよる事にもあらず」と、よるひる嘆かるるをきく心地、花紅葉の思ひもみな忘れてかなしく、いみじく思ひ嘆かるれど、いかがはせむ。 七月十三日にくだる。五日かねては見むもなかなかなべければ、内にもいらず。まいてその日はたちさはぎて、時なりぬれば、いまはとてすだれをひきあげて、うち見あはせてなみだをほろほろとおとして、やがていでぬるを見をくる心地、めもくれまどひて、やがてふされぬるに、とまるをのこのをくりしてかへるに、に、 おもふ事心にかなふ身なりせば 秋のわかれをふかくしらまし とばかりかかれたるをも、え見やられず、事よろしき時こそこしおれかかりたる事も思ひつづけけれ、ともかくもいふべき方もおぼえぬままに、 かけてこそもはざりしかこの世にて しばしもきみにわかるべしとは とやかかれにけむ。いとど人目も見えず、さびしく心ぼそくうちながめつつ、いづこばかりと、あけくれ思やる。道のほども知りにしかば、はるかにこひしく心細きことかぎりなし。明くるより暮るるまで、東の山ぎはをながめてすぐす。”
菅原孝標女 (1008–1060) said by 1060 at the latest wikiquote:ja, CC BY-SA 4.0 source